飼い犬に噛まれたら?手当てと再発防止|警察犬ドッグトレーナーが解説

犬のしつけ
犬が噛んだ時に避けたい対応|東京DOGS公式動画のサムネイル

飼い犬に噛まれた直後は、しつけを始める場面ではありません。まず人と犬を離し、傷を洗い、医療機関へ相談すべき状態かを確認します。

出血が止まらない、傷が深い、手指を動かしにくい、顔・頭・首を噛まれた場合は、家庭だけで様子を見ないでください。犬を叱る、押さえ込む、同じ場所へもう一度触れて反応を試すことも避けます。

犬を怖く感じて、すぐには近づけなくても構いません。距離を取ったままでも、傷の手当てと次の事故を防ぐ準備はできます。人の傷は医療機関へ、犬の急な行動変化は動物病院へ相談してください。

この記事の目次
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噛まれた直後にすること

1. 扉やゲートで犬と人を離す

犬を追い詰めず、可能なら扉、ベビーゲート、家具などを間に入れます。首輪をつかむ、口をこじ開ける、抱き上げるといった接触は、もう一度噛まれる危険があります。

子ども、高齢者、来客、同居動物も犬とは別の場所で過ごします。犬を動かそうとして首輪をつかまず、人が離れられる経路を確保してください。安全に分けられない時は、接触を試し続けず、動物病院や専門家へ状況を伝えて対応を相談します。

2. 出血を確認し、傷を流水と石けんで洗う

出血が止まらない時は、手当てを急ぎます。出血が多い場合は清潔な布などで傷を押さえ、救急対応のある医療機関へ連絡します。意識が遠のく、強い痛みがある、手指の感覚や動きに異常がある時も、救急要請を含めて速やかに医療機関へ相談してください。

安全を確保できたら、皮膚が破れた部分と周囲を流水と石けんで洗います。傷を自分で閉じたり、犬のしつけを優先して手当てを後回しにしたりしないでください。

日本創傷外科学会の動物咬傷の案内では、水道水での洗浄と速やかな形成外科の受診が勧められています。受診先へ連絡する時は「犬に噛まれた」と伝えてください。

3. 傷の深さと噛まれた場所を医療者へ伝える

医療機関へ伝える情報は、受傷した時刻、傷の場所と深さ、出血や痛み、手指の動き、犬の狂犬病予防注射歴、海外での受傷かどうかです。破傷風ワクチンの最終接種時期が分からない場合も、そのまま伝えます。

手や指を噛まれた場合は、穴が小さくても、それだけで受診は不要と決めないでください。傷の場所、動かしにくさ、しびれ、出血を受診先へ伝えます。傷が深い、出血が止まらない、顔や頭を噛まれた場合も、手当てを急ぎます。

時間がたってから腫れや熱感が出る、痛みが増す、傷から液が出る、発熱するといった変化があれば、医療機関へ相談してください。

「飼い犬だから感染しない」とは判断できません。症状と治療の概要は英国NHSの咬傷案内でも説明されています。診断や治療は医療者の判断に従います。

手や指の小さな傷も医療機関へ相談してください。犬のしつけより、人の手当てを優先します。

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破傷風・狂犬病・咬傷事故の届出は状況と地域で変わる

破傷風ワクチンの追加接種が必要かは、傷の状態と過去の接種歴をもとに医師が判断します。最終接種時期が曖昧な時も、自己判断で「不要」とせず受診時に確認してください。

厚生労働省の狂犬病Q&Aでは、国内での咬傷と、海外の流行地域での受傷を分けて案内しています。

海外で動物に噛まれた場合は、傷を石けんと水で洗い、早く医療機関へ相談してください。帰国まで待たず、帰国後に未受診と気づいた場合も医療機関や保健所へ連絡します。

破傷風と狂犬病は別の病気です。必要な予防や治療を、犬の予防注射歴だけで自己判断しないでください。

事故の届出は、事故が起きた地域の案内を確認します。東京都の動物による事故の案内では、24時間以内の事故発生届と、犬が人を噛んだ場合の48時間以内の狂犬病の疑いに関する獣医師の検診が示されています。

都内でも事故発生地によって提出先が異なります。特別区は区保健所、多摩地域の一部は動物愛護相談センター多摩支所が担当します。

東京都以外の期限や窓口は、その地域の動物愛護担当へ確認してください。東京都の期限を全国共通のものとして使わないでください。

「飼い犬だから届出は不要」と決めつけないでください。事故が起きた地域の動物愛護担当へ、窓口と必要書類を確認します。

噛んだ直後に避けたい5つの対応

松尾邑仁

噛んだ後は、力で押さえず、噛む場面と接し方を見直します。
YouTubeで解説動画を見る

噛まれた後、叱ったり押さえつけたりしていませんか。動画では、そうした対応のリスクと、噛む場面を減らす環境と接し方を説明しています。傷の手当てや犬の診察を済ませ、家庭での対応は個別に相談してください。

東京DOGS公式動画では、次の対応を「噛んできた時にやってはいけないこと」として説明しています。

  • 強く叱る
  • 力で押さえつける
  • 噛まれそうになった時に大きく騒ぐ
  • 嫌がっているのに触り続ける
  • 痛みや体調不良を確認せず、しつけだけで直そうとする

実際に負傷した場面では、痛みで声が出ることもあります。ここでの要点は、反応を抑えることを優先するのではなく、まず離れて手当てをすることです。その後に犬をにらむ、仰向けに押さえる、首輪をつかむ、嫌がった場所へ触り直す対応は行いません。

米国獣医動物行動学会(AVSAB)の声明でも、行動上の問題を含め、痛み、恐怖、身体的・心理的不快感を使う方法ではなく、報酬を基盤にした方法が推奨されています。

松尾邑仁

強く叱ると、さらに噛んだり、萎縮したりする場合があります。
力で対抗する前に、どんな場面で噛んだのかを見直しましょう。

首輪の着脱と帰宅時の興奮で噛む動画の事例

動画後半では、力で噛みを止めようとせず、噛む場面そのものを減らす考え方が具体例とともに説明されています。

首輪やハーネスの着脱で噛む柴犬の例

動画では、首輪やハーネス、リードの着脱で噛む柴犬の相談について説明しています。注目したいのは、付け外しを何度も試すのではなく、噛みが起きる場面を減らすという判断です。生活する場所を分ける管理も紹介されています。

これは動画で紹介された個別ケースです。リードを付けたままの生活には、家具への絡まり、誤飲、首への負荷など別の危険があります。家庭で一律に真似せず、犬の生活環境を見た専門家と安全な方法を決めてください。

帰宅時の興奮で服を噛むラブラドールの例

ラブラドールの相談では、人の声や動き、触り方と興奮の関係を説明しています。大きな声をかけながら勢いよく触る代わりに、ゆっくり接する、触らず言葉をかけるといった見直しが紹介されています。

声量、動き、接触を一つずつ見直すという考え方は、噛んだ理由を犬の性格だけで決めないための手がかりになります。家庭で試す内容は、傷の程度や犬の体調も含めて個別に相談してください。

松尾邑仁

噛んでから止めるより、噛む場面を減らす方が先です。
首輪の付け外しなのか、人の触り方なのか。起きた場面を分けて考えます。

急に噛むようになった時は、痛みと体調を先に確認する

これまで平気だった接触で急に唸る、避ける、噛むようになった場合は、しつけの問題と決めつけません。歯、耳、皮膚、関節、背中、腹部などの痛みは、外から見ただけでは分からないことがあります。

食欲や睡眠、歩き方、段差の上り下り、排泄、触られることへの反応が変わっていないかを確認し、動物病院へ相談します。痛い場所を探そうとして家庭で全身を触らないでください。

もう一度噛まれるおそれがあります。安全な距離から撮れる普段の歩き方や姿勢の動画があれば、診察前に咬傷歴と一緒に共有してください。

松尾邑仁

噛む理由を、しつけだけで考えないでください。
痛みや体調不良で触られたくない場合もあります。身体の状態も確認する必要があります。

何をした時に噛んだのかを確認する

「怖がりだから」「わがままだから」と性格の一語で片づけると、次の事故を防ぐ材料が残りません。噛む直前に人が何をしたか、犬が逃げられる場所はあったか、身体が固まっていなかったかを見直します。

噛みが起きた場面 確認すること 当面の安全管理
抱く・足を拭く・爪を切る 痛み、拘束への不安、直前の停止や顔そらし 同じ動作を中止し、動物病院へ相談する
食器・おもちゃへ近づく 物を守る反応、人との距離、子どもの接近 手で取り上げず、食事場所を分ける
寝ている犬へ触る 驚き、聴力・視力の変化、痛み 寝床へ手を入れず、離れた場所から声をかける
帰宅・遊びの最中 興奮の上がり方、人の声量や動き 接触を減らし、静かな休息へ切り替える
窓や来客へ反応している時 視線の固定、身体の硬さ、興奮の転嫁 人が間へ入らず、視界と距離を管理する

唸る、顔をそらす、身体が固まる、白目が見える、耳が後ろへ下がる、動きが止まるといった変化は、接触を終えて距離を取る判断材料です。尻尾を振っていることだけで「触ってほしい」とは判断しません。

尻尾の動きだけでは、犬の状態は決まりません。口元、目線、身体の硬さ、逃げられる距離まで一緒に見ます。

噛まれた場面を繰り返さないよう生活を変える

原因がまだ分からなくても、噛みが起きた条件を物理的に避けることはできます。これは問題の先送りではなく、診察や行動評価を落ち着いて進めるための準備です。

  • 食事中は、人と同居動物が入らない区画にする
  • 寝床へ手を入れず、犬が自分から出る動線を作る
  • 来客時は、玄関を開ける前に別室へ移す
  • 子どもへ唸る・噛むなどの反応がある場合は、大人がそばにいても接触させず、扉やゲートで分ける
  • 噛みが起きた手入れや用具の着脱を一旦中止する
  • 家族全員へ、近づかない場面と担当者を共有する
松尾邑仁

環境と接し方を、両方見直してみましょう。
噛みが起きる接触を減らすことと、人の声や動きを落ち着かせることを分けて考えます。

相談前に記録しておきたいこと

相談する時は、噛む直前に何が起き、どのように人と犬を離したかを伝えます。安全を確保した後、次の内容を家族で共有します。

  • 日時、場所、その場にいた人と動物
  • 噛む直前に人がしたこと
  • 犬がいた位置と、逃げられる場所の有無
  • 唸り、停止、顔をそらすなどの前兆
  • 噛まれた部位、回数、皮膚損傷の有無
  • 事故後に人と犬をどう離したか
  • 直近の食欲、睡眠、排泄、歩き方、服薬の変化

普段の動きは、安全な距離から撮れる時だけ動画に残します。噛む場面を撮るために、事故時の接触を再現しないでください。

家庭での練習は診察と個別相談の後に決める

噛みが起きた動作へ、家庭の判断だけで戻さないでください。診察と個別の相談を済ませ、どの距離から始めるか、誰が担当するか、どんな反応で止めるかを決めます。

食べられる、身体が固まらないといった一つの様子だけで、接触しても安全とは判断できません。

食器やおもちゃのそばで噛む場合も、取り上げたり、交換できるかを試したりしません。まず人が近づかずに済む場所へ生活の配置を変え、個別の練習は専門家と計画します。

手入れや用具の着脱が必要な場合は、必要性と安全な方法を動物病院へ相談してください。

犬が離れたら、追いかけずに終えます。逃げ道と終了の選択肢がある方が、安全な練習を組み立てやすくなります。

子犬の甘噛みと、人を負傷させる噛みを分ける

「甘噛み」という呼び名だけで判断しないでください。皮膚が破れたか、身体が硬くなっていたか、唸りがあったか、物や場所を守っていたか、興奮から戻れたかを見ます。

子犬の遊びや探索で口を使う行動でも、子どもや高齢者がいる家庭、興奮が長く続く場合、皮膚が繰り返し傷つく場合は環境調整が必要です。手をおもちゃ代わりにせず、休息、遊びの長さ、噛んでよい物を整えます。

触ると噛む、物や寝床のそばで噛む、傷ができる噛みを繰り返す場合は、遊び噛みと決めて様子を見るのではなく、動物病院と行動支援の専門家へ相談します。唸りや身体の硬さが見られなかった場合でも、傷の対応と再発防止は必要です。

「甘噛み」と呼んでいても、傷が浅いとは限りません。呼び名より、傷と犬の身体の変化を見て判断します。

子どもや同居動物が近づけないようにする

「触らなければ大丈夫」と伝えるだけでなく、扉やゲートで近づけないようにします。子どもへ唸る・噛む反応がある場合は、大人が見ている時も接触を避け、専門家の個別の指導を受けるまで完全に分けてください。

Dogs Trustの行動相談案内でも、子どもに攻撃的な反応を示す犬について、専門家の指導を受けるまでは接触させないよう案内しています。

クレートやサークルは、犬が普段から安心して休める場合の選択肢です。初めての囲いへ押し込んだり、首輪をつかんで移したりしないでください。食事、水、休息、排泄を確保できる場所を用意します。

多頭飼いでは、食事、玩具、帰宅時、玄関、ソファなど、興奮や競合が起きやすい時間を分けます。犬同士の間へ手を入れて止めるのではなく、事故前に区画を分けてください。

口輪が必要な時は動物病院へ相談する

診察や移動のために口輪を検討する場合は、予約時に咬傷歴を伝え、必要な種類や装着方法を動物病院へ相談します。嫌がる犬を押さえつけて付ける方法や、家庭だけで口元へ手を近づける練習は行いません。

口輪があっても、距離を取ることや人と犬を分ける管理は必要です。口輪を理由に苦手な接触を続けないでください。

口輪は、犬を我慢させて触るための道具ではありません。診察や移動での使用は、犬の状態を伝えて動物病院へ相談します。

相談先は「人の治療・犬の診察・行動支援」で分ける

確認したいこと 相談先
人の傷、感染、破傷風、狂犬病の判断 医療機関、地域の救急相談、必要に応じて保健所
犬の痛み、病気、服薬、診察時の安全 かかりつけ動物病院、行動診療を扱う獣医師
家庭の動線、再発防止、段階的な練習 噛みの個別ケースと報酬ベースの方法を扱うトレーナー
事故発生届と犬の検診 事故が起きた地域の保健所・動物愛護担当

相談時は、事故記録、傷の写真、犬の診療歴と予防接種歴、普段の生活、子ども・高齢者・同居動物の有無を伝えます。「何日で必ず直る」「上下関係を示せば解決する」と断定する相手ではなく、安全管理と医療連携を具体的に説明できる相手を選びます。

人の傷と犬の身体は、トレーナーだけで判断しません。医療機関、獣医師、行動支援の役割を分けて相談します。

東京DOGSへ家庭での再発防止を相談する場合は、噛まれた場面と、動物病院で確認したことをお知らせください。

移動や用具の着脱に危険がある時は、来店する前にお問い合わせから対応方法をご相談ください。出血や傷の治療は、当社の返信を待たず医療機関へ連絡してください。

飼い犬に噛まれた時のよくある質問

噛んだ後、犬を無視すれば反省しますか?

反省を期待して長時間隔離するのではなく、再発を防ぐために安全な距離を作ります。落ち着いた後も、原因が分からないまま接触を試さず、事故前後の記録と診察・相談を進めます。

噛まれた場所をもう一度触って確認してよいですか?

噛まれた場面を家庭で再現しないでください。もう一度噛まれる可能性があります。痛みが疑われる場合は、咬傷歴を事前に伝え、診察時の安全も含めて動物病院へ相談してください。

犬が唸ったら叱るべきですか?

唸りは、犬が距離を求めている時に出ることがあります。唸りだけを止めようとせず、人が距離を取り、直前の接触や周囲の状況を記録します。

一度噛んだ犬は、また必ず噛みますか?

一度の事故だけで将来を断定することはできません。ただし、同じ条件が繰り返されれば再発する可能性があります。傷の程度、前兆、原因候補、家庭環境を個別に評価します。

相談まで散歩はどうすればよいですか?

首輪やハーネスの着脱で噛む場合、無理に通常の散歩へ戻しません。排泄方法と安全な移動を動物病院やトレーナーへ相談し、一人で着脱を試さないでください。

噛まれたら、まず手当てと再発防止を

犬と人を離し、人の傷の手当てを優先します。その後に犬の痛みと体調を確認し、事故前後を記録してください。

強く叱る、力で押さえる、嫌がった場所へもう一度触る対応は、原因の確認にはなりません。

ゲートや扉で距離を作り、同じ場面を繰り返さない生活へ変えたうえで、人の傷は医療機関へ、犬の身体は獣医師へ、家庭の再発防止は個別ケースを扱える専門家へ相談してください。

手当てと受診の準備を済ませた後は、唸る・噛む場面別の対応で、食事中・休息中・接触時に繰り返さない管理を確認してください。

犬が唸る・噛むときの対処法|警察犬ドッグトレーナーが解説

歩く足首や裾を追って噛む場面がある場合は、人の足を噛む時の対応もご覧ください。人の傷への対応を後回しにして練習を始めるものではありません。

犬が足を噛む原因と対処法|警察犬ドッグトレーナーが解説

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