犬との引っ張りっこの遊び方|警察犬ドッグトレーナーが解説

犬との引っ張りっこは、人が勝ち続けるための遊びではありません。おもちゃを低い位置で動かし、犬が無理なく参加できる間に休止を入れることから始めます。
犬におもちゃを取らせてもよいのか、興奮したらどう終えるのか。迷ったときは、勝ち負けよりも、犬が無理なく遊べているかを見てください。
この記事では、おもちゃの選び方、始め方と終え方、遊びをやめる目安を紹介します。離す合図を一から教える練習と、普段の遊び方は分けて考えます。
この記事の目次
動画が表示されない場合は、YouTubeで見る。
引っ張りっこを始める前の5つのルール
- 犬が自分から参加する時だけ始める
- 足が滑らない広さのある場所で行う
- おもちゃは犬の口と人の手の間に余裕がある長さを選ぶ
- 床に近い位置で、横方向へ小さく動かす
- 休止を入れ、離す合図を理解している犬では再開する回も作る
運動量は、遊びだけで決めない
犬を疲れ切らせることや、人が勝ち続けることを目標にしません。遊びは体を動かす機会の一つですが、散歩や探索、休息も含めて、その犬の一日の過ごし方を考えます。
噛み癖への対応は、噛む場面から考える
人の手や服ではなく、おもちゃを使って一緒に遊ぶ時間を作れます。すでに覚えた合図を遊びの中で使う機会にもなりますが、引っ張りっこだけで噛み癖や問題行動が直るとは限りません。
おもちゃを離さなくても、頭や首を押さえない
おもちゃを離さない犬に、引っ張る力を強めたり、頭や首を押さえたりしないでください。犬の動きを封じて取り上げようとせず、人がおもちゃを動かすのをやめます。
動画では、リードを短く持って犬の動きを制限しながら離す方法も説明されています。家庭で同じ方法を再現することは勧めません。頭や首を固定しなくても一緒に遊べるかを、先に確認してください。
始める前に犬の体と場所を確認する
遊び方より先に、今日の犬の状態を見ます。
治療中や術後の犬、普段の歩き方や口元に気になる変化がある犬は、遊んでよいかを先に獣医師へ確認してください。引っ張りっこで状態を試したり、無理に体を動かして痛みを調べたりしません。
おもちゃを持った犬が体を固める、近づくとうなる、噛もうとする場合は、引っ張りっこや交換を家族だけで試さないでください。子どもやほかの動物を近づけず、安全な距離を確保し、獣医師と行動の専門家へ相談します。
- 歩き方に左右差がないか
- 普段の動きで、首や体を痛がる様子がないか
- 口元に出血がないか、口を痛がる様子がないか
- 呼吸が落ち着いているか
- おもちゃを見た時、自分から近づくか
犬が踏ん張っても足が滑らず、家具の角や階段から離れた場所を選びます。フローリングで足が滑るなら、滑りにくいマットの上へ移動してください。場所を変えても滑る場合は、その日は遊びをやめます。
犬が顔を背ける、後ろへ下がる、おもちゃから離れる、伏せたまま動かない時は誘い続けません。
引っ張りっこ用おもちゃの選び方
人の手が犬の口元へ近づきすぎないよう、両者が持てる長さがあるおもちゃを選びます。
| 確認項目 | 選び方 |
|---|---|
| 長さ | 犬が中央をくわえても、人が端を安全に持てる |
| 大きさ | 犬が無理なくくわえられ、口の奥へ入ってしまう小ささではない |
| 素材 | 口を傷つける硬い角や鋭い部品がなく、犬の歯が滑りにくい |
| 状態 | 糸、布、ゴム片、笛、継ぎ目が外れかけていない |
| 清潔さ | 使用後に汚れや唾液を落とし、十分に乾かせる |
犬用のおもちゃでも、小さすぎたり、犬が部品を外せたりするものは使えません。遊ぶ前後に、糸のほつれ、裂け目、笛などの部品が緩んでいないかを点検し、破損があれば使用をやめます。
昨日まで使えていたおもちゃも、遊ぶ前に点検してください。
犬が自分からくわえるのを待って始める
1.床の近くで小さく動かす
おもちゃを犬の頭上へ掲げず、床に近い位置で小さく動かします。犬が自分から口を近づけるのを待ち、興味を示さないときは口へ押しつけたり、顔の前で振り続けたりしません。
2.始める合図は家族でそろえる
始めるときの言葉は「取って」「どうぞ」など一つにそろえます。まだ言葉の意味が分からない犬に合図だけを繰り返しても、くわえるとは限りません。まずは犬が自分から参加できる遊び方にします。
3.夢中になりすぎる前に休止する
初回から長く続けず、犬が無理なく参加できている間に、おもちゃの動きを止めます。足が滑る、手へ歯が当たる、動きを止めても引き続ける場合は、その回の遊びを切り上げてください。
安全な動かし方:床に近い高さで横へ小さく動かす
犬がくわえたら、足が床につく高さで、おもちゃを左右へ小さく動かします。人が強く引き続けるのではなく、犬の動きに合わせて手を動かしてください。犬が足を踏み外すようなら、動きを止めます。
- 犬の四足が床につく高さを保つ
- 首を左右へ急激にねじらない
- おもちゃを上下へ強く振らない
- 犬をおもちゃで持ち上げない
- 急に手を離して犬を転ばせない
高い位置へおもちゃを見せ、犬を跳ばせ続ける遊びは避けます。体を大きく揺さぶる動きや、くわえた犬を吊り上げる動きも行いません。
犬を勝たせてもいいのか
引っ張りっこで犬におもちゃを取らせたからといって、それだけで人より優位になった、攻撃的になったとは判断できません。
犬がおもちゃを取れた後、自分から人のそばへ戻るなら、再び一緒に遊べます。離れて休むなら追いかけず、犬が戻ることを求め続けません。
犬を追い回して回収しようとすると、逃げる犬との追いかけっこになることがあります。おもちゃを守って体を固める場合は、別のおもちゃで誘い直すのではなく、距離を取り、対面で相談してください。
おもちゃを離さないときにしてはいけないこと
人も引き続けたまま「離して」を繰り返すと、犬にとっては遊びが続いている状態です。まず人がおもちゃを振る動きをやめます。犬の頭や首を押さえて動きを封じる方法は、家庭でまねしないでください。
すでに離す合図を理解している犬では、おもちゃを放せたら褒め、もう一度遊ぶ回も作ります。まだ合図を教えていない犬に、言葉だけで放すことを求めたり、口へ指を入れて取り出そうとしたりしません。
合図をまだ教えていない場合
まだ離す合図を知らない犬には、引っ張りっこの最中に言葉を繰り返して覚えさせようとしません。まず、落ち着いて参加できる場所と短い練習を用意します。
放す合図を一から教える方法は「ちょうだい」の記事へまとめています。物を守る反応がある犬には、家庭だけで交換練習を試さず相談してください。
遊びを終える時は、最後の一回を静かに終える
離す合図を理解している犬では、いつもの合図で放せたことを褒めて終えます。まだ離せない犬から、終わりのたびに力で取り上げる方法にはしません。
- 短く遊ぶ
- おもちゃを静止する
- 離す合図を理解している犬では、いつもの合図を使い、放せたことを褒める
- 犬が落ち着いて休める場所へ切り替える
- 犬が自分から離れ、人が近づかずゲートなどで空間を分けられてから片づける。分けられなければ無理に拾わない
片づけるのは、上下関係を示すためではなく、犬がひとりで壊して破片を飲み込む危険を減らすためです。引っ張りっこ用のおもちゃを、そのまま留守番中にも使えるものとは考えません。
興奮しすぎたらその回の遊びをやめる
次の様子が出たら、その回の遊びを中止します。おもちゃを奪おうとせず、安全な距離を確保してください。
- 人の手や服へ歯が当たる
- おもちゃを見た瞬間に飛びつき続ける
- いつもの合図に反応せず、動きを止めても引き続ける
- 犬が滑る、家具へぶつかる
- 唸り方や体の硬さが急に変わる
大声で叱ったり、押さえ込んだりせず、人が動きを止めます。
手や服へ歯が当たった場合は、その回の遊びを中止します。興奮をあおる動きや追いかけをやめ、犬が離れてから距離を確保してください。おもちゃを奪うために口元へ手を近づけず、繰り返す場合や噛もうとする反応がある場合は、対面で相談します。
子犬・小型犬・シニア犬では遊び方を変える
子犬
子犬がくわえやすい大きさと素材を選び、強く引かないようにします。口を痛がる、出血する、普段と違う噛み方をする場合は遊びをやめ、動物病院へ相談してください。生え替わりかどうかを、飼い主だけで判断して続けません。
小型犬
人との高さの差が大きいため、おもちゃを上へ引き上げやすくなります。人が床へ座るか姿勢を低くし、犬の四足を床につけたまま遊びます。
シニア犬
若い頃と同じ強さで遊べるとは限りません。立ち上がり方や普段の歩き方に変化がある場合は、先に獣医師へ相談します。遊びを続けられるか、強く引いて試すことはしません。
関節・背骨・歯の治療歴がある犬
遊んでよい動きと強さを、かかりつけの獣医師へ確認します。動画や一般記事だけで再開時期を決めません。
すぐに中止して相談するサイン
- 遊び中や遊んだ後に鳴く、足をかばう、首を動かしにくそうにする
- 歯が欠けた、口から出血した
- おもちゃの破片を飲み込んだ可能性がある
- 呼吸が戻らない、舌色がおかしい、倒れる
- おもちゃへ近づいただけで体を固め、唸る、噛もうとする
- 子どもや家族へ向かって、おもちゃ以外を繰り返し狙う
おもちゃの破片を飲み込んだ疑いがある場合は、元気そうでも動物病院へ連絡します。自分で取り出そうとせず、飲み込んだ物、分かる範囲の時刻、今の様子を伝え、獣医師の指示を受けてください。
息が苦しそう、倒れる、強く痛がる、出血している場合も、遊びやしつけを続けず動物病院へ連絡してください。
おもちゃを守って体を固める、唸る、噛む場合は、引っ張りっこや交換練習を家族だけで繰り返さず、安全な距離を確保して対面で相談します。
よくある質問
引っ張りっこをすると犬が攻撃的になりますか?
引っ張りっこをしたことだけで、攻撃的になったとは判断できません。人の手や服を狙う、体を固める、近づくと唸るなどの行動は分けて観察します。
犬を勝たせると上下関係が逆転しますか?
勝ち負けだけで犬と人の関係を判断しません。犬が取った後も戻って遊べること、開始・停止・再開が安全にできることを基準にします。
唸りながら遊ぶのは危険ですか?
遊び中に声が出る犬もいますが、声だけで安全とは判断しません。おもちゃを持って体を固める、近づくとうなる、歯を見せるなど、いつもと違う反応があるときは、叱らずに離れてください。確かめるために、もう一度おもちゃへ手を伸ばすこともしません。
いつ遊びを切り上げますか?
一律の時間を決めず、犬の反応を見て休止します。犬が離れる、足が滑る、手へ歯が当たる、痛がる様子があれば、続けないでください。飽きるまで誘い続ける必要もありません。
毎日してもいいですか?
体に問題がなく、その日の状態がよければ短い遊びを生活へ取り入れられます。痛み、疲労、暑さ、足元の滑りがある日は休みます。
おもちゃを離さない時は口を開けてもいいですか?
口をこじ開けたり、指を口元へ入れたりしないでください。離す合図が通らないときは、引っ張り続けず遊びを止めます。固まる、うなる、噛もうとする反応がある場合は、交換も家族だけで試さず、距離を確保して相談してください。
関連する記事
おもちゃを引く遊びに興味がない日は、無理に続けなくてかまいません。持ってこいや探す遊びなど、ほかの選び方もこちらで紹介しています。
唸る、噛もうとする時の安全管理と相談の目安はこちらをご確認ください。反応を確かめるために物へ近づかないでください。
次に遊ぶときはおもちゃと足元から確認する
次に遊ぶ前に、おもちゃの破損と足元の滑りを確認してください。犬が自分から参加するなら、低い位置で小さく動かし、飽きるまで続けずに休止を入れます。
犬が無理なく参加している間に休止を入れ、離す合図を理解している犬なら、放せたことを褒めて再開する回も作ります。離さない犬や、おもちゃを守る犬へ無理に続ける方法ではありません。
体を痛がる、息が苦しそう、口から出血する場合は、動物病院へ相談します。おもちゃを守る反応がある犬では、家庭で取り上げる練習を繰り返さず、獣医師と行動の専門家に相談してください。
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