犬の基本的なしつけ方と注意点|警察犬ドッグトレーナーが解説

犬のしつけは、できた行動をその場でほめ、少しずつ教えていきます。
最初から多くの合図を覚えさせるより、トイレや休む場所など、毎日の生活で必要なことから取り組みましょう。
名前、トイレ、人との接し方、ハウス、散歩など、基本的な教え方を項目別に紹介します。
すべてを一度に練習する必要はありません。
今、困っている場面に合う項目から読んでください。
家に迎えた犬には、まず食事・排泄・休息ができる環境を整えます。
子犬も成犬も、落ち着いて過ごせる場面で短い練習を始められます。
月齢だけを見て急いで教え込むのは避けましょう。
この記事の目次
基本のしつけを項目別に選ぶ
以下は、犬との生活でよく使うしつけの項目です。
上から順に終わらせる必須の順番ではなく、暮らしの中で並行して教えていく内容も含まれます。
名前・トイレ・合図など、教えたい行動の節へ進んでください。
アイコンタクトのしつけ方法
アイコンタクトは、犬がこちらへ顔を向ける練習です。
長く目を見つめさせることより、飼い主に注意を向けたらよいことがある、と覚えてもらいましょう。
最初は静かな室内で、犬が自然にこちらを見た瞬間をほめます。
散歩中にも同じ反応を求めるなら、人や犬が近すぎない場所から練習し直してください。
顔をつかんで目を合わせる必要はありません。
目が合ったら、すぐに好むご褒美を渡します。
反応が続くようになってから、場所などの条件を少しずつ変えます。
周囲ばかり見てこちらを向けないときは、刺激の少ない場所へ戻りましょう。
名前学習のしつけ方法
名前は、飼い主に注意を向ける合図として教えます。
落ち着いてこちらを向ける場面で名前を呼び、顔を向けたらほめてご褒美を渡しましょう。
反応しないときに、名前を何度も連呼したり怒鳴ったりしないでください。
周囲の刺激を減らし、自然に顔を向けられる場面からやり直します。
練習で使う呼び名と、顔を向けたときの対応は家族でそろえます。
名前を呼んだ直後に叱る、という使い方は避けましょう。
トイレのしつけ方法
トイレは、家の中のどこで排泄してほしいかを決めるところから始めます。
寝床とトイレを分け、犬が使いやすい場所や広さを用意してください。
寝起き、食後、遊んだ後など、排泄しやすいタイミングでトイレへ案内します。
床のにおいを嗅いで歩き回るなどの様子も手がかりになります。
毎回の時刻と場所を記録すると、次に案内するタイミングを考えやすくなります。
決めた場所で排泄できたら、終わった直後にほめます。
失敗しても叱らずに片づけ、次は案内を早めるなど環境とタイミングを見直しましょう。
急に失敗が増えたなど、排泄の様子が変わった場合は動物病院へ相談してください。
- 寝床と分けた場所に、使いやすい広さのトイレを用意する
- 寝起き・食後・遊んだ後などにトイレへ案内する
- 決めた場所で排泄が終わった直後にほめる
トイレの配置や誘導の手順、失敗した時の見直し方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
人に慣れるための練習
体に触れる練習は、犬が嫌がらずに触らせる場所から始めます。
短く触れる、手を離す、ご褒美を渡す、という流れで、少しずつ慣らしましょう。
体を引く、顔を背ける、体がこわばるなどの変化が見えたら、手を離して休みます。
逃げる犬を追いかけたり、押さえつけて触り続けたりしないでください。
ブラシなどの道具も、見せるところから段階を分けて紹介します。
爪切りや耳のケアを、嫌がるまま繰り返す練習にしないでください。
痛がる、うなる、噛もうとする場合は、触る練習を中断し、動物病院や専門家へ相談しましょう。
ハウスのしつけ方法
ハウスは、犬が休める場所として使います。
まずは扉を開けた状態で、犬が自分から近づいたり入ったりできるようにしましょう。
押し込んで扉を閉めるのは避けます。
「中に入る」「扉が閉まる」「飼い主が離れる」は、それぞれ別の練習です。
ハウスに入れたからといって、すぐに留守番ができるとは限りません。
中で落ち着いて過ごせるようになってから、扉や飼い主との距離を少しずつ変えます。
鳴き続ける、出口をかくなどの様子が出たら進めず、無理なく過ごせた段階へ戻してください。
- 犬が立つ・向きを変える・体を伸ばすことのできるハウスを用意する
- 扉を開け、犬が自分から入れるようにする
- 中で無理なく過ごせたら、扉を動かす練習へ進む
- 落ち着いて過ごせる範囲で、飼い主との距離を少しずつ変える
人・犬・生活音に慣れる練習
社会化は、身の回りの人、犬、音、場所などを少しずつ経験することです。
すべての人に触らせることや、すべての犬と遊ばせることが目標ではありません。
犬が落ち着いて周囲を見られる距離から始め、気になる相手や音があっても無理なく過ごせたらほめます。
怖がって離れようとする場合は、それ以上近づけないでください。
子犬の早い時期の経験は、その後の生活への慣れに関わります。
一方、成犬になったら新しいことを学べない、というわけではありません。
これまでの経験や今の反応に合わせて進めましょう。
子犬を外へ連れ出す時期や他の犬と接する条件は、ワクチン接種の状況を含めて獣医師に確認します。
慣らすために、混み合うドッグランへいきなり入れる必要はありません。
近づくことより、無理なく見ていられる経験を優先してください。
指示語のしつけ方法
「おすわり」「まて」「ふせ」などは、犬にしてほしい動きを伝える合図です。
生活で使いたいものから、一つずつ教えましょう。
合図は、上下関係を示すためのものではありません。
怖がって吠える場面などでは、合図を繰り返すだけで解決しようとせず、相手との距離や周囲の状況も見直します。
犬がしてほしい動きをできたら、すぐにほめてご褒美を渡します。
体を押して姿勢を作るのではなく、無理なくできる動きから始めてください。
使う言葉と動きの組み合わせは、家族でそろえましょう。
「お手」などの芸を、すべての犬に覚えさせる必要はありません。
暮らしで必要な合図を優先して大丈夫です。
具体的に教える合図を選びたい方は、生活で使うコマンドの一覧へ進んでください。
食事のしつけ方法
食事は、落ち着いて食べられる場所を用意します。
食べている間に器へ手を入れたり、しつけのつもりで取り上げたりしないでください。
練習に使う食べ物は、対象年齢や与え方を確認し、小さく分けて準備します。
食事制限や療法食の指示がある場合は、何をご褒美に使えるか獣医師に確認しましょう。
食事や食べ物を使った練習では、次の点を守ってください。
- 食事を抜かず、練習用のご褒美と日々の食事を区別する
- 食事中に器へ手を入れたり、食べ物を取り上げたりしない
- 与えてよい食べ物と量を確認し、家族でそろえる
吠え方のしつけ方法
吠えたときは、「いつ・どこで・何を見聞きしたか」を記録します。
来客、窓の外の人、ひとりになった場面など、始まる状況によって見直す条件が違います。
まずは吠えるきっかけから距離を取るなど、周囲の刺激を減らします。
吠え始める前に落ち着いて過ごせた場面をほめ、ただ黙るまで我慢させる対応は避けましょう。
急に吠え方が変わった場合は、体調も含めて動物病院へ相談してください。
噛み癖のしつけ方法
手や服への遊び噛みには、大声を出したり、手を振り回したりする対応を避けます。
安全にできる範囲で遊びを休み、噛んでよいおもちゃへ切り替えましょう。
繰り返し噛まれて離れられない場合は、無理に押さえず、ゲートなどで距離を取ります。
噛まれる強さや、触ったとき・食事中など噛み始める場面を見てください。
うなる、体が固まる、人が傷つくほど噛む場合は、家庭で試し続けず専門家へ相談します。
人がけがをした場合は医療機関へ、犬に急な行動変化や痛みがある場合は動物病院へ相談してください。
散歩のしつけ方法
散歩では、人の前に出たかどうかだけでなく、リードが張り続けていないかを見ます。
道路への飛び出しを防げる距離を確保しつつ、犬が無理なく歩けるようにしましょう。
静かな場所でそばに立てたらほめ、数歩一緒に歩けたところでご褒美を渡します。
リードが張ったら安全な場所で止まり、緩んだら歩き直してください。
リードを急に引き戻して教える方法は使いません。
毎日の暮らしで使う行動を教える
しつけは、犬にしてほしい行動を教えることです。
叩く、口を押さえる、怒鳴る、といった対応で我慢させるものではありません。
生活の中では、例えば次のような場面で練習が役立ちます。
- 名前を呼んだらこちらへ顔を向ける
- 他の犬と距離を取り、無理なく過ごせる場所を選ぶ
- 日常のケアに向けて、嫌がらない範囲で触る練習をする
- 来客時に休める場所を用意する
旅行やドッグランは、犬がその場所で無理なく過ごせるかを見て選びます。
人の合図を覚えていても、リードやゲートなどによる安全管理は続けてください。
できるようになったことだけでなく、まだ難しい場面も記録しておきましょう。
散歩コースや来客時の過ごし方を選ぶときの手がかりになります。
練習する場所とご褒美を見直す
教えるときは、犬が取り組みやすい環境、ご褒美のタイミング、練習の長さを見直します。
楽しみながらトレーニングすること
練習は、犬も飼い主も落ち着いて取り組めるときに行います。
最初から多くを求めず、できる動きを一つ選んで始めましょう。
犬が離れていく、繰り返し失敗する、興奮して手に噛みつくなどの様子が出たら、いったん休みます。
飼い主が疲れたり焦ったりしたときも、続けずに切り上げてください。
褒めること
ほめるのは、してほしい行動ができた直後です。
例えば名前を呼んで顔を向けたなら、その反応にご褒美を渡します。
別の動きを始めるまで待たないようにしましょう。
声の高さを一律に変える必要はありません。
大きな声で興奮する犬には、落ち着いた声や少量の食べ物など、次の練習につながるご褒美を選びます。
ご褒美を取り出す間に褒めたい動きが終わってしまう時は、短い言葉やクリッカーを「今の行動を褒める合図」として教える方法もあります。
クリッカーの音を怖がる場合は使わず、音とご褒美を結び付ける始め方を次の記事で確認してください。
コツコツ行うこと
一度の練習で長く続けるより、短い練習を繰り返します。
その回に何を教えるかを一つ決め、できたところで切り上げましょう。
家の中ではできたのに外ではできない、ということもあります。
新しい場所では周囲の音や人との距離を調整し、できていた簡単な段階からやり直してください。
うまくいかないときは、場所、ご褒美、求めた動き、犬の様子を記録します。
前にできた条件との差を見直すと、次に変える点を絞れます。
おやつを使うこと
食べ物は、できた行動を伝えるご褒美の一つです。
犬が好み、無理なく食べられるものを小さく分けて使いましょう。
食べない場合は無理に口へ入れず、環境や体調を見直します。
練習で与えた分も含めて、食事の量を確認してください。
食事制限がある場合は、ご褒美の種類と量を獣医師に相談します。
食べ物で反応しないからといって、食事を抜いて練習するのは避けましょう。
叱る前に、環境と教え方を変える
教え方に迷ったときも、叩く、怒鳴る、罰として閉じ込める対応は使いません。
次の項目で、避けたい対応と代わりにすることを確認してください。
叩かない
犬を叩いたり、痛みで行動を止めたりしないでください。
望む行動ができる状況を作り、できたところをほめて教えます。
興奮が強く安全に練習できないときは、練習を中断して人と犬の距離を確保します。
落ち着くまで押さえつけるのではなく、ゲートなどで安全に分けてください。
名前を呼んで叱らない
名前は、こちらへ顔を向けたらよいことがある合図として使います。
呼んだ直後に叱るための言葉にしないでください。
名前を使わず「こら」と言えばよい、ということではありません。
繰り返し困る行動には、起こりにくい環境を用意し、代わりにしてほしい行動を教えます。
クレートやケージを罰に使わない
クレートやケージを罰として使わないでください。
休む場所として慣れていることと、嫌がる犬を閉じ込めて我慢させることは別です。
入口でためらう、扉が閉まると鳴き続ける、出口をかくなどの様子があれば、無理に進めません。
扉を開けた状態で過ごすなど、無理なくできた段階へ戻ります。
ハウスを使う場合も、排泄、運動、水分、休息など、その犬に必要な時間と環境を確保します。
長時間の留守番を、クレートに入れるだけで解決しようとしないでください。
事後に叱らない
後から失敗を見つけても、犬を叱りません。
片づけたうえで、次に同じことが起こりにくい環境へ変えてください。
その場で見つけた場合も、怒鳴ることが次の行動の教え方になるわけではありません。
安全を確保し、犬にしてほしい行動へ案内して、できたところをほめます。
子犬のしつけを始めるタイミング
子犬を迎えたら、生活に必要なことから少しずつ教えます。
トイレへ案内する、名前を呼んで顔を向けたらほめる、といった練習は、普段の世話と並行して始められます。
子犬の早い時期には、身の回りの人や音に慣れる経験も少しずつ取り入れましょう。
ただし、怖がる犬を刺激に近づけ続けるのは避けます。
外へ出る時期や他の犬との接触は、ワクチン接種の状況を含めて獣医師に確認してください。
迎えた直後に何を優先するか迷ったら、暮らしと練習を並行して進める考え方をご覧ください。
基本のしつけで迷いやすいこと
子犬を迎えたときや、練習がうまくいかないときによく出る疑問に答えます。
子犬期のしつけで身につけるべきことは何ですか?
最初からすべての合図を覚えることより、生活の中で次のような経験を作ります。
- 名前を呼んだら、こちらへ顔を向ける経験を作る
- 決めた場所で排泄できるよう、日々の世話の中で案内する
- 噛んでよい物と休む場所を用意し、困る場面を確認する
できない項目があっても、月齢だけを理由に急がせる必要はありません。
噛む・吠える場面では、無理にゼロにしようとするより、安全管理と始まる状況の確認を先に行ってください。
犬のしつけは何歳から何歳まで必要ですか?
家に迎えてから、その犬の体調や生活への慣れに合わせて始めます。
成犬やシニア犬でも、新しいことを学ぶ練習はできます。
社会化に取り組みやすい子犬の時期と、しつけを終わらせる期限は別です。
「生後4か月までに全部終える」と考えず、その犬が無理なくできる条件で続けましょう。
急にできなくなった場合は、痛みや体調の変化がないか動物病院へ相談します。
犬の「ダメ」のしつけ方はどうすればいいですか?
「ダメ」と言うだけでは、代わりに何をすればよいかは伝わりません。
危険を避けるための環境を整え、してほしい行動を別に教えましょう。
- 危険な物には届かない環境を用意する
- 代わりにしてほしい行動を短い合図で教える
- できた行動をその場でほめる
- 噛まれるおそれがある場合は、試し続けず相談する
例えば手に噛みついて遊ぶなら、手を使った遊びを休み、噛んでよいおもちゃへ切り替えます。
大声で「ダメ」を繰り返す練習にはしないでください。
うなる、体がこわばるなど、傷つくおそれがある場合は試し続けず専門家へ相談します。
犬の散歩の引き癖のしつけ方はどうすればいいですか?
引っ張りが続くときは、練習する場所とリードの扱いを見直します。
道路や他の犬のすぐ近くではなく、安全に止まれる場所から取り組んでください。
- 道路へ飛び出さず、リードが張り続けない距離を確保する
- 安全な場所で止まり、リードが緩んだら歩き直す
- 相手や刺激が近すぎる場合は距離を取る
- 落ち着いてこちらを向けたところをほめる
何を見たときに引っ張るかを確認し、そばで無理なく歩ける場所から練習します。
相手へ近づきたくて引く場合も、離れたくて引く場合もあるため、動きだけで性格を決めつけないでください。
犬がこちらを向けないほど強く反応するなら、その場で練習を続けず、相手や刺激から距離を取ります。
飼い主が転びそうな強さの場合や、犬が痛がる・急に歩き方が変わった場合は、トレーナーや動物病院へ相談してください。
犬のしつけ方はどのような順番で行った方が良いですか?
トイレと休む場所は、名前や合図の練習が終わるまで待つ必要はありません。
毎日の世話と並行して整え、練習ではその日に教える動きを一つ選びます。
今日の練習は、一つの行動から
今日の練習は、今困っている場面に合う項目を一つ選びましょう。
静かな場所でできる動きから始め、できた直後にほめます。
うまくいかなければ、回数を増やす前に場所や求める動きを簡単にしてください。
噛まれる危険や、痛みを疑う変化がある場合は練習を続けず、適切な相談先へ進みましょう。
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