犬を叱らないしつけと褒め方|警察犬ドッグトレーナーが解説

犬のしつけ

床に排泄の跡を見つけたり、大切な物がかじられていたりすると、思わず声が大きくなることがあります。あとで「叱らなければよかった」と感じても、何を変えればよいか分からず、同じことを繰り返してしまうかもしれません。

叱らないしつけは、困る行動をそのまま許すことではありません。失敗が起きにくい環境をつくり、犬にしてほしい行動を教え、その行動が出た時に褒める方法です。危険があれば、安全を確保する対応も必要です。

ここではトイレの失敗と物を壊す場面を中心に、叱る代わりに飼い主さんができることを整理します。

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叱って止まることと、望む行動を覚えることは別

大声や体への強い働きかけで、その場の動きが止まることはあります。しかし、それだけでは、次にどこで排泄すればよいか、何をかじってよいかまでは伝わりません。怖がったり、人の接近を避けたりする可能性もあります。

動かなくなった姿を「反省している」、尻尾を振る姿を「もう平気」と一つの動作だけで解釈しないようにします。体が固い、離れようとする、近づくと唸る時は、それ以上の接触をやめ、安全に距離を取ってください。

松尾 ゆうと

してほしくない行動を数えるだけでなく、「その場で何をしてくれたら助かるか」を一つ決めると、教える内容が具体的になります。家族でも、叱る言葉ではなく、予防する方法と褒める行動を共有しましょう。

困っている場面先に整える環境教える行動
トイレ以外で排泄する行きやすい場所、十分な広さ、清潔なシート適切な場所で排泄できたら、その後に褒める
物をかじって壊す危険物と壊されたくない物を片付ける安全に使えるおもちゃで遊ぶ
遊びの最中に興奮しすぎる遊ぶ場所と休息の取り方を見直す無理なく休める、簡単な合図に応じられる場面を増やす

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トイレを失敗した時は、片付けと次の予防を分ける

後から見つけた排泄物の前で叱らない

帰宅後などに失敗を見つけても、犬をその場所へ連れていって叱ったり、鼻を近づけたりしません。犬を安全な別の場所へ移してから、汚れとにおいを片付けます。洗剤や清掃用品は犬が触れないように扱ってください。

失敗は、覚え方だけでなく、トイレへ行けなかった、シートが汚れていた、足元が使いにくかったなど、生活上の条件でも起こります。

急に回数が増えた、痛がる、尿に血が混じるなどの変化は獣医師へ相談してください。尿を出そうとしているのに出ない時は、しつけの相談を待たず動物病院へ連絡します。

排泄しやすい機会を逃さず、終わってから褒める

起きた後や食後、遊んだ後など、その犬が排泄しやすいタイミングを記録します。落ち着いて行けるトイレへ案内し、排泄中は邪魔せず、終わったところで穏やかに褒めましょう。

おやつでトイレへ呼んだことと、そこで排泄を覚えたことは別です。長く閉じ込めて待たせたり、水を減らしたりする必要はありません。汚れたシートを大量に残してにおいを強くするより、使いやすさと清潔さを確認します。

成功した時間や条件が分かれば、次の案内を考えやすくなります。「失敗がゼロになるまで見張り続ける」のではなく、飼い主さんが続けられる管理方法へ調整してください。

物を壊す時は、片付けることも大切なしつけ

靴や充電コードに届く場所で「かじらないで」と繰り返すより、犬が触れない場所へ移す方が先です。小さな部品、薬、電池、食べ物なども含め、飲み込める物を片付けましょう。

物を持った犬を追いかけると、逃げたり、取り合いになったりすることがあります。唸る、体を固くする場合は無理に取り返さず、安全を確保して相談します。

危険な物を飲み込んだ疑いがある時は、症状がなくても動物病院へ連絡し、家庭で吐かせたり口をこじ開けたりしないでください。

何でもよいからおもちゃを増やす、ではない

犬の大きさや遊び方に合い、壊れた部分を飲み込みにくい物を選びます。最初は見守れる時に使い、傷みがあれば片付けてください。安全なおもちゃを自分で選んで遊んだ時や、遊びを区切って休めた時を褒めます。

留守中の破壊を一律に「運動不足」や「いたずら」とは決めません。外へ出ようと必死になる、長く吠える、落ち着けないなどの様子があれば、不安や体調も含めて確認が必要です。

ケージは、閉じ込めて反省させる場所にしない

事故を防ぐためにスペースを区切ることはありますが、犬が慣れていないケージへ長時間入れれば解決するわけではありません。休息、排泄、水、温度、留守番できる状態を整え、無理な隔離にならない方法を選びます。

使う場所へ自分から入れるように慣らす練習と、留守番そのものは分けて考えましょう。柵やケージの中で暴れる、傷つくほど脱出しようとする時は、そのまま我慢させず、管理方法から相談してください。

褒める時は、犬が喜ぶものとタイミングを合わせる

松尾 ゆうと

してほしい行動が出たら、その時に短い言葉を添え、ご褒美につなぎます。例えば、かじってよいおもちゃを使っている時に認めるのであって、家具をかじり終わった後に何となくおやつを渡すのではありません。

頭をなでる、大きな声で喜ぶ、抱きしめることが、どの犬にもご褒美になるとは限りません。体を引く、顔をそむけるなどの様子があれば触るのをやめ、その犬が無理なく受け取れる食べ物や遊び、穏やかな声かけを選びましょう。

褒め続けて興奮を上げる必要もありません。落ち着いている場面なら、静かな伝え方にします。食事制限がある犬のご褒美は獣医師へ相談し、練習分を含めて食べる量を管理します。

イライラした時は、練習を休んでよい

松尾 ゆうと

犬の安全を確認したうえで、飼い主さんが距離を取って落ち着く時間をつくってください。うまくできるまで続けるより、いったん終えて、何が難しかったかを後から整理する方がよい時もあります。

叩く、怒鳴る、体を押さえつける対応が繰り返されそうなら、家族と管理を分担し、早めに支援を受けましょう。犬に噛まれる心配がある、子どもと安全に暮らせない場合も、自己流の練習より安全管理と個別相談を優先します。

叱らずに暮らすための工夫は、声を我慢することだけではありません。失敗が起きる条件を変え、犬ができる行動を用意し、できた時を見逃さないこと。その積み重ねを、毎日の生活に取り入れてみてください。

トイレの環境と練習手順を詳しく見直す場合はこちらです。

安全なおもちゃ遊びで、放す合図を教える方法も紹介しています。

ケージやクレートを休む場所として慣らす時の進め方を確認できます。

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